キャタピラーが決算でコケたのは世界経済減退の兆しです、という風潮。本当にそうなのか。

  

建機需要が前年を割り込んだ事で決算が不調だったキャタピラー(CAT)の株価は、昨晩の相場で急落しました。これにより中国経済の減速が改めて浮き彫りになったのみならず、( 建機需要は世界景気の先行指標でもあるため) 世界経済減速の兆候と捉える事もできます(キリッ)。

と、いうような風潮が一部で見られますが、バロンズは少し違った見解なので、なるほど世界経済停滞の兆候とまではちょっと言いすぎかもねと思うようになりました。

  

”キャタピラーの株価には大穴が開いたが、必ずしも資本財セクター全体に破滅が波及する事を意味するわけではない(バロンズ2019.1.28)”

  

決算内容はそんなに悪かったか?

良いニュースとしては、CATの2018第4Q決算は必ずしも資本財セクター全体の株価に対する悪いニュースではない、という事だ。資本財セクターの他企業の決算が美しい結果であれば、という条件付きだが。

CATの決算は全てがダメだったわけではない。2018年売上高は+20%。粗利益は+24%の170億ドルだった。粗利益の史上最高値である2012年(180億ドル)を僅かに下回る水準だ。受注残は158億ドルから165億ドルに増加した。

資源ビジネスや建設業界が回復基調にあることから、CAT経営層は売上と利益が、2018年ほどの増収率ではないにせよ、2019年も前年を上回ると予想している。

またCATは1月28日の取引時間中に一時9%近く下落した(@125ドル)が、資本財ETFである資本財セレクト・セクター SPDR ファンド(XLI)は僅か1%しか下落していない(@69ドル)。資本財セクター全部が売られたわけではない。

  

リストラ費用の計上がキャタピラーのEPSを押し下げた。それを建機需要減とだけ結論付けるのはいかがなものか。

CATのライバル企業であるスウェーデンのアトラス(ATCOA / スウェーデン)は同日決算発表であったが、好決算により株価は2%上昇している(建機ビジネス全体が不調なのではない)。

CATとアトラスの明暗を分けたものは何か?

一つは中国の売上減であるが、CATの場合2017第4Qの中国売上高が良すぎた。その反動が今年現れている。

二つ目はCATのリストラ費用の反映だ。2018年に4億ドルの費用を計上したのがEPSの重しとなった。もしこの4億ドルのインパクト(1株あたり40セント)が無かったとしたら、EPSは12.25ドルのガイダンスから12.65ドルとなり、市場予測の12.73ドルにかなり近づく。もしガイダンスがこのような数値であったら、投資家はもう少し落ち着いていられたかもしれない。

  

  

逆に米中貿易問題が解決したらどうなると思う?

CATの経営層は決算発表で米中貿易問題の関税政策に関する言及を避けた。しかしアトラスのCEOは決算発表で「米中関税問題が解決すれば中国の巨大プロジェクトの参入の意思決定でポジティブな判断を下すことができる」と述べた(CATも同様の考えだと予想できる)。

  

  

つまり

CATの決算結果を見て「厳しい時代の到来だ」と判断する事はたやすいが、資本財セクター全体に当てはめるべきではない。

他企業からもし綺麗な決算発表が続けば、セクターの株価回復の助けになるだろう。

今週はスリーエム(MMM)、シーメンス(SIE/ドイツ)、GE、ボーイング(BA)、などの主力銘柄の決算発表が控えている。

  

  

  

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