ハイテクが暴落するなんてウサギとカメの寓話と同じぐらい信憑性が無いという話

 

世界はいま、過去に例をみないほど爆発的な発明と発見と成長の時代を迎えようとしている。変化のスピードが速くなるほど、過去の教訓に耳を傾けることはいよいよ重要になる。『成長の罠』を警戒し、投資の基本原則を理解すれば、過去に例を見ない変化の時代にも繁栄する事ができる。投資家の未来は明るい。

ジェレミー・シーゲル著 瑞穂のりこ訳 「株式投資の未来」より

 

ジェレミー・シーゲル教授の「赤本」として知られる「株式投資の未来」は、成長の罠という言葉を使い、成長企業が必ずしも株主に高いリターンをもたらすわけではない事を説きました。

これは間違いではないと思います。

シーゲル教授は成長の罠の例の一つとして、中国企業への投資を挙げています。中国企業そのものが利益や売上高を大きく伸ばして成長してきたものの、投資家がその中国企業の株式へ投資して必ずしも高いリターンが得られたわけではない事を著書の中で明らかにしています。

またブラジルやロシア等の新興国投資も、国家の成長に見合うだけリターンは株式投資家は得る事ができなかったことも指摘しています。

正しいです。成長の罠という考え方は、投資先を決定するうえで考慮に入れるべき重要な概念の一つだと思います。

   

で、この本でシーゲル教授は「成長の罠を暴く」ということで、米国株の中でもセクター別の過去リターンを調査して、「投資家の為の教訓」を記しているんですね。ざっくりいうと以下のような教訓になります*。

■長期的に投資するなら、米国株の話題のセクターを追い求める投資では残念なリターンしか得られないだろう

■米国株のセクター成長率の高さは必ずしも高いリターンを意味しない

*注:この本が執筆されたのは2004年ごろ、出版されたのは2005年ごろです。従って本書で述べられている過去の米国株セクター別リターンは2004年ごろまでのデータしかなく、その後リーマンショックやそれを経て2021年現在まで続くGAFAMを始めとしたハイテクの目覚ましいリターンは、含まれていません

  

話題のセクターというのは、この本の執筆当時ではエネルギーとハイテクですね。どちらもバブルを形成し、崩壊したということです。

エネルギーセクターは1970年代の石油価格急騰で株価が急伸し、1980年代前半の世界経済の失速と共にバブル崩壊。ハイテクはもうお馴染みの2000年ドットコムバブルピークに向けて株価が急伸し、バブル崩壊

急成長したエネルギーセクターやハイテクセクターは投資家に市場平均またはそれを下回るリターンしかもたらさず、逆にタバコなどの生活必需品セクターは結果的に高いリターンをもたらしたという事です。

  

確かに正しかったですね。この本の執筆当時は

 

結果論ですし、未来は分からないので何とも言えませんが、リーマンショック以降2021年時点までのハイテクセクター、というかAppleやAmazonやGoogleなど特定のハイテク銘柄の躍進ぶりと、それに加えて生活必需品なんかのセクターの低リターンっぷりを見ると、「成長の罠」の罠**というような感じになってしまっているんじゃないかなあと思いますね・・・

**「成長の罠」の罠とは!?・・・「成長の罠」を避けて高いリターンを得るために投資先から成長セクターを外した結果、逆に低リターンに嵌まるという罠

  

これってウサギとカメの話に似てるなあって思うんですよね。そして日本人ってウサギとカメの話が大好き。コツコツ進めばいずれ勝てる、みたいな?

今はウサギ(成長セクター)が高いリターンを生んでいるけど、カメ(非成長セクター)のコツコツ積み重ねる低リターンが長期的には正義であり、最終的にはカメがウサギを追い抜く・・・という。

でもこれってリードしたウサギが寝る前提で物事を考えることになってませんか。

生き馬の目を抜く世界有数の激戦セクターで戦うウサギが競争途中で「寝る」ことなんてあり得ないので、そこに期待するだけ無駄です。

個人的にはウサギとカメの寓話はあまり好きではありません。教訓にならない。 現実世界でライバルは寝ないんだよ・・・そんな甘い世界あるかよ・・・という気持ちになります。

(この寓話の教訓の主役はウサギの方であって、要するに「お前、リードしてるからって途中で寝るなよ」ってことが言いたいんだと思います)

  

ハイテクは成長し、投資家に高いリターンを生み続けてきました。

おかげで、ハイテクはいま暴落して株価が半分になっても、これまで積み上げてきたリターン沢山があるので、昔から投資をしていた投資家的にはまあ大したダメージにはなりません。

ハイテクの取得価格が高い、比較的新しい投資家はそこそこ痛いかもしれませんが、コロナショックを見る限りでは暴落後の回復力はハイテクがもっとも優れているのでまあ何とか頑張って耐えましょうという気になります。

ニュースを見ているとウォール街でも「セクターローションが起こる」という声がだんだん大きくなっているので、ハイテクからそれ以外への資金流出が起こる可能性は無視はできないかもしれませんが、ここはあえて無視します

理由は、真面目な答えと身も蓋もない答えの2つあります。

真面目な答えとしては、ハイテクセクターは時代の変化に合わせて素早く対応し事業領域を拡大する企業が多く、今後も発展が継続する可能性が高いという事です。単なるインターネット企業から、クラウド、AI、自動運転、EV、持続可能エネルギー、宇宙と、発展のフィールドは終わりがありません。たとえハイテクが暴落しても光の速さで値を戻すでしょう。

見も蓋もない答えとしては、全力米国株ポートフォリオはS&P500を中心としたインデックス投資の割合が大きいので、どのセクターが上がってもS&P500が上がればどうでもいいんです別に

 

だからどっちにしろ、ハイテクが暴落しても全然いいんやで。

 

  

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